米国のICC制裁に高市首相「深く懸念」、外相も声明で働きかけ継続
2026年10月9日夜、高市早苗首相は自身のX(旧ツイッター)に、米トランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)を制裁対象に指定したことについて「日本の立場と相容れるものではなく、深く懸念している」と投稿しました。同じ夜には茂木敏充外相も声明を出し、米国への働きかけを続ける考えを示しています。ICCをめぐる米国の措置について日本政府が考えを示したのは、今回が初めてではありません。2026年8月25日には、米国がICCの赤根智子所長を制裁対象に指定したことについて、首相が「大変深刻に受け止めている」と表明していました。この記事では、首相と外相の発言の中身、ICCのしくみ、ここまでの経緯と今後の論点を、朝日新聞と時事通信の報道をもとに整理します。
📌 この記事の要点
- 2026年10月9日夜、高市首相は米国のICC制裁指定について「日本の立場と相容れず、深く懸念」とXに投稿しました。
- 同じ9日夜、茂木外相は声明でルビオ国務長官と意見交換したと述べ、米国への働きかけを続ける考えを示しました。
- 2026年8月25日、首相は米国による赤根ICC所長の制裁指定を「大変深刻に受け止めている」と表明していました。
目次
何が起きたのか:首相のX投稿と外相の声明
朝日新聞の報道によると、高市早苗首相は2026年10月9日夜、自身のX(旧ツイッター)に投稿し、米トランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)を制裁対象に指定したことについて考えを示しました。投稿の中心にあるのは「日本の立場と相容(あいい)れるものではなく、深く懸念している」という一文です。首相はその前提として、「我が国は国際社会における法の支配を一貫して重視し、その役割を担うICCを支持している」と説明しています。ここでいう法の支配とは、力の強い者の意思ではなく、あらかじめ定められたルールにもとづいて物事を解決するという考え方を指します。
首相の投稿は、懸念の表明だけで終わっていません。ICCへの対応については、2026年9月の日米首脳会談で、外相どうしで意思疎通を続けることを確認していると記しました。
そのうえで「米国に対する働きかけを続けるとともに、ICCがその本来の役割と機能を果たせるよう必要な支援を行っていく」と書いています。投稿には、米国との対話を続けることと、ICCを支えることという二つの方向が並んで示されているわけです。
同じ9日夜には、茂木敏充外相も声明を出しました。声明では、米国のルビオ国務長官と意見交換したことを明らかにし、今後も意思疎通を継続していくと述べています。さらに、赤根智子ICC所長や関係国との意思疎通を続けながら、国際社会における法の支配の強化に取り組んでいく考えも示しました。首相の投稿と外相の声明は同じ夜に出されており、米国への働きかけの継続と法の支配の重視という点で内容が重なっています。
朝日新聞の記事は、今回の米国の措置について「ICCを制裁対象に指定した」と伝えています。
一方、時事通信が伝えた2026年8月の段階では、米国はICCの赤根所長を制裁対象に指定していました。報道の上では、8月は所長、10月はICCという裁判所そのものが制裁の対象として書かれている点に違いがあります。日本政府はこの二つの段階のいずれについても、自国の立場と合わないという趣旨の考えを示してきたことになります。
各立場の主張:首相と外相は何を述べたか
ここでは、元記事と時事通信の記事にある日本政府側の発言を、発言者と発言の場ごとに整理します。
まず高市早苗首相です。2026年10月9日夜のX(旧ツイッター)への投稿で、首相は「我が国は国際社会における法の支配を一貫して重視し、その役割を担うICCを支持している」としたうえで、「今回の措置は、こうした一貫した日本の立場と相容れるものではなく、深く懸念している」と述べました。今後の対応については「米国に対する働きかけを続けるとともに、ICCがその本来の役割と機能を果たせるよう必要な支援を行っていく」と書いています。これは朝日新聞が伝えた内容です。
首相はこれに先立つ2026年8月25日にも、ICCをめぐる米国の措置について発言していました。時事通信によると、米国がICCの赤根智子所長を制裁対象に指定したことに関し、首相は「日本の立場と相いれず、大変深刻に受け止めている」と表明しています。
あわせて、赤根氏を制裁対象としないよう米国にさまざまなレベルで働き掛けてきたと明かしました。ICCについては「法の支配の徹底のため、一貫として支持している。最大の資金拠出国として、守っていかなければならない」と述べたと報じられています。時事通信はこの記事の見出しで、首相が「弱腰」との批判に反論したと伝えました。
次に茂木敏充外相です。2026年10月9日夜に出した声明で、外相は「米国のルビオ国務長官と意見交換し、今後も意思疎通を継続していく」と述べました。続けて「難しい状況の中でも、引き続き、米国に対して働きかけを行うとともに、赤根(智子)ICC所長や関係国との意思疎通を継続しつつ、国際社会における法の支配の強化に取り組んでいく」としています。
二人の発言を並べると、共通点がいくつか確認できます。
8月と10月のいずれでも「日本の立場と相いれない」という言い方が使われていること、ICCを支持するという説明が繰り返されていること、米国への働きかけを続けると述べていることです。10月の首相の投稿には「必要な支援を行っていく」という表現が加わっており、外相の声明は赤根所長や関係国との意思疎通にも触れています。
制度のしくみ:国際刑事裁判所(ICC)とはどんな裁判所か
国際刑事裁判所(ICC)は、国家ではなく個人の刑事責任を問う常設の国際裁判所です。所在地はオランダのハーグにあります。設立の根拠となっている条約はローマ規程(ICCの設立や運営を定めた国際条約)と呼ばれ、この条約に加わった国(締約国)がICCを支えるしくみになっています。
ICCが扱う犯罪は、集団殺害犯罪(ジェノサイド)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪の四つに限られています。いずれも国際社会全体にとって最も重大とされる犯罪で、国家の指導者や軍の幹部など、地位の高い個人が責任を問われることもあります。
ICCの特徴の一つに、補完性の原則と呼ばれる考え方があります。まず各国の国内の裁判所が捜査や裁判を行うことを前提とし、その国に捜査や訴追を行う意思や能力がない場合に限ってICCが乗り出す、というものです。
ICCは国内の司法に取って代わる存在ではなく、国内で裁かれない重大犯罪を扱う役割を担っています。
組織としては、裁判を担当する裁判部門、捜査や起訴を担当する検察局、事務を担う書記局などで構成されています。裁判官は締約国の会議で選ばれ、所長は裁判官の中から選ばれます。所長は裁判所全体の運営に責任を持つ立場で、現在は日本出身の赤根智子氏がこの職を務めています。
運営に必要なお金は、主に締約国からの分担金でまかなわれています。高市首相は2026年8月25日の発言で、日本を「最大の資金拠出国」と表現しました(時事通信の報道)。首相が「守っていかなければならない」と述べたのは、この財政面の関わりにも触れた文脈でのことでした。
一方、米国はローマ規程の締約国ではありません。条約に加わっていない国でも、自国の法律にもとづいて独自に制裁を科すことはできます。
制裁は国際機関の決定ではなく、各国の国内法による措置だからです。一般に米国の制裁指定は、対象者の米国内の資産を凍結したり、米国の個人や企業との取引を禁じたりする形をとります。首相が投稿で「ICCがその本来の役割と機能を果たせるよう必要な支援を行っていく」と書いたのは、こうした制裁指定がICCに向けられたことを受けての発言です。
外交の手続き:首相の発信、外相声明、首脳会談の関係
今回、日本政府の考えは二つの形で示されました。首相のSNS投稿と、外相の声明です。それぞれがどのような位置づけの発信なのかを整理しておくと、ニュースの読み方が分かりやすくなります。
首相がX(旧ツイッター)で考えを示す方法は、記者会見や国会答弁とは異なり、首相自身の言葉が直接、国内外に届く発信の手段です。今回の投稿は9日夜に行われ、朝日新聞がその内容を報じました。投稿の中で首相は、日本の基本的な立場、今回の措置についての受け止め、今後の対応という三つの要素を順に書いています。
外相の声明は、外交を担当する閣僚が、ある出来事に対する政府の見解を文書の形で示すものです。茂木外相の声明は、米国のルビオ国務長官との意見交換、赤根所長や関係国との意思疎通という具合に、具体的な相手の名前を挙げている点に特徴があります。
ルビオ国務長官は、米国で外交を担当する閣僚にあたり、日本の外相と対応する立場の人物です。
首相の投稿では、2026年9月の日米首脳会談で、ICCへの対応について外相間で意思疎通を続けることを確認していると説明されています。首脳会談は国のトップどうしの会談で、そこで確認された方針にもとづき、実務を担当する閣僚どうしが協議を重ねていくのが外交の一般的な進め方です。10月9日の外相声明でルビオ国務長官との意見交換に触れていることは、首脳会談で確認した外相間の意思疎通が、実際に行われていることを示す内容になっています。
また、2026年8月25日の時事通信の記事によると、首相は赤根所長を制裁対象としないよう、米国に「さまざまなレベルで」働き掛けてきたと明かしていました。
政府の外交では、首脳、閣僚、事務方といった複数の階層で相手国と接触するのが通例で、「さまざまなレベル」という言い方はこうした複数の経路を指す表現として使われます。
外相の声明は、米国だけでなく、赤根所長や「関係国」との意思疎通にも触れています。首相の投稿と外相の声明を合わせて読むと、日本政府は米国との二国間の対話と、ICCやほかの国々との対話の両方を続けていく方針を示しています。
背景・経緯
今回のニュースは、2026年夏からの流れを時系列で追うと分かりやすくなります。
国際刑事裁判所(ICC)は、ローマ規程にもとづいて設けられた常設の国際裁判所で、日本は締約国としてICCを支えてきました。高市首相は2026年8月25日の発言で、日本を「最大の資金拠出国」と表現しています(時事通信の報道)。ICCの所長は日本出身の赤根智子氏が務めています。
時事通信によると、米国はICCの赤根所長を制裁対象に指定しました。これを受けて首相は2026年8月25日、「日本の立場と相いれず、大変深刻に受け止めている」と表明しました。首相は、赤根氏を制裁対象としないよう米国にさまざまなレベルで働き掛けてきたことも明かしています。時事通信はこの記事の見出しで、首相が「弱腰」批判に反論したと伝えました。
続いて2026年9月には日米首脳会談が開かれました。
首相の10月9日の投稿によると、この会談でICCへの対応について外相間で意思疎通を続けることが確認されています。
そして朝日新聞の報道によると、米トランプ政権はICCを制裁対象に指定しました。これに対し首相は2026年10月9日夜にXへ投稿し、「日本の立場と相容れるものではなく、深く懸念している」と述べました。同じ夜、茂木外相も声明を出し、ルビオ国務長官と意見交換したことや、米国への働きかけ、赤根所長・関係国との意思疎通を続ける考えを示しています。
8月の時事通信の報道では赤根所長が、10月の朝日新聞の報道ではICCそのものが制裁の対象として伝えられています。日本政府はそれぞれの段階で懸念を表明しつつ、米国との対話を続ける方針を示してきました。
読者への影響
このニュースは、日本の外交方針と税金の使い道の両方に関わります。ICCの運営費は主に締約国の分担金でまかなわれており、高市首相は2026年8月25日の発言で日本を「最大の資金拠出国」と表現しました(時事通信の報道)。日本の拠出は国の予算から出ているため、その財源には私たちの納める税金が含まれます。首相は10月9日の投稿で「必要な支援を行っていく」と書いており、どのような形の支援になるのかは今後の論点です。また、日本政府は法の支配の重視を外交の柱の一つとして説明しています。同盟国である米国の措置とこの方針が合わないと政府自身が述べている点は、日米関係のニュースを読むうえでの手がかりになります。
今後の論点
今後の論点の一つ目は、外相間の意思疎通の行方です。首相の投稿によると、2026年9月の日米首脳会談でICCへの対応について外相間で意思疎通を続けることが確認されており、茂木外相は10月9日の声明でルビオ国務長官と意見交換し、今後も意思疎通を継続すると述べました。今後、外相どうしの協議でICCがどのように扱われるかが注目点になります。
二つ目は、首相が投稿で示した「ICCがその本来の役割と機能を果たせるよう必要な支援」の中身です。日本は首相の言葉で「最大の資金拠出国」とされており、財政面を含め、どのような支援を行うのかが今後の論点になります。
三つ目は、赤根所長や関係国との連携です。外相の声明は、米国だけでなく赤根所長や関係国との意思疎通を続けるとしています。ICCを支える他の締約国との間でどのようなやり取りが行われるかも、確認していく必要があります。
四つ目は、2026年8月に伝えられた赤根所長への制裁指定と、10月に伝えられたICCへの制裁指定が、今後の日米協議の中でどのように扱われるかです。首相は8月の時点から米国にさまざまなレベルで働き掛けてきたと述べており、その働きかけが続いていくことが首相と外相の双方の発言で示されています。
報道各社の論調
取得できた資料には、元記事の朝日新聞のほかに、時事通信の記事が1本あります。時事通信は2026年8月25日の記事で、高市首相が同日、米国がICCの赤根智子所長を制裁対象に指定したことに関し「日本の立場と相いれず、大変深刻に受け止めている」と表明したと伝えました。記事では、首相が赤根氏を制裁対象としないよう米国にさまざまなレベルで働き掛けてきたと明かしたこと、ICCを「法の支配の徹底のため、一貫として支持している。最大の資金拠出国として、守っていかなければならない」と述べたことも伝えています。見出しには、首相が「弱腰」批判に反論したとあります。一方、朝日新聞は2026年10月9日夜の首相のX投稿を取り上げ、米トランプ政権がICCを制裁対象に指定したことに首相が「深く懸念している」と書いたこと、茂木外相が同じ夜に声明を出したことを伝えました。
二つの記事は扱っている時期と制裁の対象が異なり、時事通信は8月の所長への指定、朝日新聞は10月のICCへの指定に対する政府の発信を報じています。
編集部の見解
編集部としては、この件を次のように整理しています。
まず確認できたことです。高市早苗首相は2026年10月9日夜、米トランプ政権がICCを制裁対象に指定したことについて、Xに「日本の立場と相容れるものではなく、深く懸念している」と投稿し、米国への働きかけとICCへの必要な支援を続ける考えを示しました。同じ夜、茂木敏充外相は声明でルビオ国務長官と意見交換したと述べています。首相は2026年8月25日にも、米国による赤根智子所長の制裁指定について「大変深刻に受け止めている」と表明していました(時事通信の報道)。また、2026年9月の日米首脳会談で外相間の意思疎通を続けることを確認したと首相は説明しています。
次にまだ分からないことです。
まだ分からないこととして、米国がICCを制裁対象に指定した日付と具体的な制裁の内容、9月の日米首脳会談の日付と詳しいやり取り、首相が述べた「必要な支援」の中身、茂木外相とルビオ国務長官の意見交換の日時と形式、米国政府側の説明は、現時点の資料では確認できていません。
最後に今後の確認点です。外相間の協議の進み方、日本政府が示す支援の具体的な内容、赤根所長や関係国との意思疎通の状況について、政府の発表や各紙の報道を引き続き確かめていきます。
本稿の論点整理
2026年10月9日夜、高市早苗首相は米トランプ政権がICCを制裁対象に指定したことについて、Xで「日本の立場と相容れるものではなく、深く懸念している」と表明しました。同じ夜、茂木敏充外相も声明を出し、ルビオ国務長官との意見交換と、米国への働きかけの継続を示しています。首相は2026年8月25日にも、赤根智子ICC所長への制裁指定を「大変深刻に受け止めている」と述べていました。2026年9月の日米首脳会談では外相間の意思疎通を続けることが確認されており、今後は外相どうしの協議の行方と、首相が示した「必要な支援」の具体化が論点になります。
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参照元:朝日新聞
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