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安保3文書を改定する有識者会議とは?非核三原則見直しも議論の焦点に

安保3文書を改定する有識者会議とは?非核三原則見直しも議論の焦点に
seiji.tokyo 編集部
読了 約11分(約4,126字)

政府は安全保障に関する最重要文書「安保3文書」の改定に向け、元駐米大使や大学教授ら15人で構成する有識者会議の設置を発表しました。この記事では、そもそも安保3文書とは何か、なぜ今改定が必要とされているのか、非核三原則(日本が核兵器を「持たず・作らず・持ち込ませず」とする国是)の見直し議論が浮上している背景、そして私たちの暮らしや税負担にどう影響しうるかを、丁寧に解説します。

🕐 約8分で読めます
📰 引用元:朝日新聞

📌 この記事の要点

  • 政府は安保3文書改定に向け、元外交官・学者・経済人ら15人の有識者会議を発足させた
  • 経済安保やサイバーセキュリティに加え、非核三原則の見直しも議題に上がる可能性がある
  • 初会合は27日にも開催予定で、高市首相が掲げる「防衛力の抜本的強化」方針と連動している

安保3文書とは何か、そして今なぜ改定するのか

「安保3文書」とは、日本の安全保障政策の骨格を定める3つの文書の総称です。具体的には、外交・防衛の大方針を示す「国家安全保障戦略(NSS)」、10年先を見据えた防衛の方向性を定める「国家防衛戦略」、そして予算規模や装備の整備計画を示す「防衛力整備計画」の3点を指します。これらはいわば日本の安全保障における「憲法」と「予算計画」と「実行計画」を一体化させたような文書群であり、どの方向に防衛力を向け、どこにお金をかけるかを決める根拠となるものです。

前回の改定は2022年12月、岸田政権のもとで行われました。この改定では「反撃能力(敵のミサイル発射拠点などを攻撃する能力)」の保有が初めて明記され、防衛費をGDP(国内総生産)比2%に倍増させる目標も盛り込まれました。これは戦後日本の安全保障政策の大きな転換として国内外で注目を集めました。

今回、高市首相が改定に動く背景には、急速に変化する安全保障環境があります。北朝鮮による弾道ミサイル発射は頻度を増し、中国は台湾周辺での軍事活動を活発化させています。さらにウクライナ侵攻以降、欧米諸国でも核抑止や防衛費増強の議論が加速しており、日本もその潮流のなかで政策を見直す必要があると判断しているとみられます。加えて、人工知能(AI)やサイバー攻撃など「従来の軍事力では対応しきれない新たな脅威」への対応も急務とされており、これが今回の有識者会議のテーマにも反映されています。

15人のメンバー構成から見える「この会議が重視するもの」

発表されたメンバーの顔ぶれは、単純に防衛や外交の専門家だけにとどまらない点が特徴的です。外交・安保分野では元駐米大使の佐々江賢一郎氏、元防衛事務次官(防衛省の事務方トップ)の黒江哲郎氏、元統合幕僚長(自衛隊のトップ)の山崎幸二氏など、実務経験豊富な元政府高官が名を連ねています。学術面では東大の鈴木一人教授(国際政治・経済安全保障)、筑波大の東野篤子教授(欧州政治・国際安全保障)、慶応大の細谷雄一教授(国際政治史)らが加わっています。

一方で目を引くのは、経済・産業・技術分野からの参加者が複数いることです。東レの大矢光雄社長、三菱UFJ銀行の三毛兼承特別顧問、NECの森田隆之社長といった産業界の重鎮のほか、科学技術振興機構理事長の橋本和仁氏、AI研究者として著名な東大の松尾豊教授も名前があります。これは「安全保障=軍事力」という旧来の枠組みを超え、経済や技術・サイバーといった「新しい安全保障の形」を重視していることの表れと読むことができます。

さらに、フジテレビ社長の清水賢治氏と読売新聞グループ本社社長の山口寿一氏というメディアのトップ2人が加わっている点も注目されます。こうした会議へのメディア関係者の参加は、情報発信の戦略や世論との接点を意識したものとも解釈できますが、一方で「政府寄りの報道につながるのではないか」という懸念の声がメディア研究者や市民団体から上がることも過去の例では見られており、今後の議論の推移とあわせて注視が必要な点と言えます。

非核三原則の見直しとは何を意味するのか

今回の有識者会議で特に議論になりうるとされているのが「非核三原則」の扱いです。非核三原則とは、1967年に当時の佐藤栄作首相が表明した「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という日本の国是であり、後に国会決議で確認された方針です。被爆国である日本にとって、この原則は核政策の根本に据えられてきたものです。

「持ち込ませず」の部分については、これまでも長年にわたって議論がありました。日米間では「有事の際に米軍の核兵器を搭載した艦船が日本の港に寄港できる」とする密約の存在が指摘されており、2010年3月に政府(鳩山政権下)の有識者委員会調査で、1960年の安保条約改定時に「暗黙の合意」(広義の密約)があったこと、および1969年の沖縄返還時に佐藤首相とニクソン大統領による有事の際の核持ち込み合意議事録の存在が確認されました。

今回の改定論議の文脈では、米国が提供する「核の傘(同盟国への核抑止の保証)」を実効性あるものにするために「核の共有(ニュークリア・シェアリング)」や「持ち込ませず」の見直しを検討すべきだという意見が一部から出ています。高市首相もかつてこうした見直しに前向きな発言をしたことがあります。

ただし、被爆国としての歴史的な立場や核不拡散体制(核兵器の広がりを防ぐ国際的な枠組み)への影響を考慮すれば、原則を変えることへの慎重論も根強くあります。有識者会議がこのテーマに踏み込むかどうかは、今後の会議の進め方次第とも言えます。

「経済安保」「サイバー」が安保に加わるのはなぜか

今回の有識者会議では、従来の軍事力に加え、経済安全保障(経済的な手段を使った安全保障上のリスク管理)とサイバーセキュリティ(インターネットやデジタル空間への攻撃への対応)が重点テーマとされています。これはなぜでしょうか。

一つの大きな背景は、近年の国際的な経済安保の潮流です。半導体(電子機器の頭脳にあたる部品)や希少資源(レアアース)の供給網をめぐる米中の対立は激化し、特定の国への依存が安全保障上のリスクになりうることが広く認識されるようになりました。日本でも2022年に経済安全保障推進法が成立し、重要技術や重要インフラ(社会の基盤となる電気・通信・交通などの設備)の保護が政策課題として浮上しています。今回のメンバーに産業界や技術者が多い理由も、こうした流れを反映したものと考えられます。

サイバーについては、電力・金融・通信などの重要インフラへのサイバー攻撃が増加しており、軍事的な攻撃と組み合わされる「ハイブリッド戦争(軍事・経済・情報などを複合的に使った戦い方)」への対応が各国で急がれています。日本の現状は、米国や欧州と比較してサイバー防衛体制が遅れているという指摘が専門家から継続的に出ており、この会議でも具体的な強化策が検討される見通しです。

これらの議論は一見、一般市民とは縁遠いように思えるかもしれません。しかし、半導体工場の国内誘致に使われる補助金も、サイバー対策に投じられる予算も、最終的には私たちの税金から出るものです。この会議の議論の方向性が、今後の予算の使い道に影響を与える可能性は十分にあります。

背景・経緯

安保3文書の歴史を振り返ると、「国家安全保障戦略」の前身は1957年に策定された「国防の基本方針」にさかのぼります。戦後日本は憲法9条のもとで「専守防衛(攻撃を受けた場合にのみ必要最小限の防衛力を行使する)」を原則とし、防衛費もGDP比1%程度に抑える慣行が長く続きました。

大きな転換が訪れたのは2013年です。第2次安倍政権が初めて「国家安全保障戦略」を策定し、NSS(ナショナル・セキュリティ・ストラテジー)と呼ばれる文書として防衛政策の基本を明文化しました。さらに2022年12月、岸田政権はこの文書を抜本改定し、反撃能力の保有や防衛費GDP比2%目標を盛り込んだことで、国際的にも大きな注目を集めました。

その後、2025年に高市政権が発足すると、首相は2月の施政方針演説で「安全保障環境の変化が加速度的に生じている」と述べ、再改定への意欲を示しました。北朝鮮の核・ミサイル開発の進展、中国の軍事力拡大、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、そして米トランプ政権下での同盟関係の再交渉といった複合的な要因が重なり、「2022年改定からわずか数年で再び見直しが必要」との認識が政府内で高まったとみられます。なぜ今このタイミングかといえば、高市政権発足後の政治的な勢いと、急変する国際情勢への対応を急ぐ必要性が重なったためと考えられます。

読者への影響

安保の議論は遠い話に感じるかもしれませんが、私たちの家計と無縁ではありません。防衛費の増額はすでに始まっており、財源として法人税・所得税・たばこ税の増税が予定されています。今回の改定でさらなる防衛力強化が盛り込まれれば、増税の幅が広がる可能性があります。また、半導体工場誘致などの経済安保政策には多額の補助金が投じられており、その財源も税金です。国の安全保障の方向性を決める議論は、巡り巡って皆さんの税負担や社会サービスの優先順位に関わってきます。だからこそ、この会議の議論に目を向けておく意味があります。

今後の展開予想

まとめ

政府が設置した有識者会議は、安保3文書の改定に向けた議論の場として、外交・防衛・経済・技術・メディアなど多分野の専門家15人で構成されています。経済安保やサイバーセキュリティに加え、非核三原則の見直し議論が行われる可能性もあり、日本の安全保障政策の方向性を大きく左右しうる動きです。今後の初会合の内容と、そこで示される議論の枠組みに注目しておくことをおすすめします。

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参照元:朝日新聞

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