選挙

連合の組合員が自民に最多投票、なぜ労働組合票は割れるのか

連合の組合員が自民に最多投票、なぜ労働組合票は割れるのか
seiji.tokyo 編集部
読了 約13分(約4,944字)

労働組合の中央組織である連合の組合員が、2026年2月の衆院選小選挙区で自民党に最も多く投票していたことが明らかになりました。連合が支援する国民民主党や中道改革連合を上回る29.6%という数字は、労働組合と支持政党の関係が大きく揺らいでいることを示しています。この記事では、なぜ連合組合員の票が分散したのか、その背景と構造的な問題、そして今後の労働組合と政治の関係がどう変わりうるかを丁寧に解説します。

🕐 約8分で読めます
📰 引用元:朝日新聞

📌 この記事の要点

  • 衆院選小選挙区で連合組合員の29.6%が自民に投票し、支援政党の国民民主(27.7%)を上回った
  • 連合推薦候補201人のうち当選はわずか40人で、2024年衆院選の149人から大幅に減少した
  • 芳野会長は「自民支持層が増えている」と危機感を示し、政策浸透の遅れを課題として挙げた

小選挙区での自民最多得票、何を意味しているのか

連合が2026年4月に実施した組合員向けアンケートの結果では、2月の衆院選小選挙区における投票先として自民党が29.6%とトップに立ちました。連合が組織を挙げて支援した国民民主党(27.7%)と中道改革連合(26.0%)をいずれも上回る数字です。

この結果が注目される理由は、連合が長年にわたって「反自民」の立場を基本とし、旧民主党系の政党や現在の国民民主党・立憲民主党などへの支持を組織内で呼びかけてきた歴史があるためです。それにもかかわらず、構成員の3割近くが自民候補に投票したという事実は、組合員の政治意識が組織の方針とかなりの乖離(かいり)を生じさせていることを示しています。

一方、比例区では国民民主(38.8%)、中道(22.0%)、自民(19.0%)と順番が異なり、小選挙区と比例区で投票行動が変わっています。

小選挙区は「候補者個人」を選ぶ選挙のため、地域の自民党候補の知名度や実績が影響しやすく、組織の推薦よりも個人的な判断が働きやすいという側面があります。つまり小選挙区での自民票は、必ずしも「連合組合員が自民党を支持した」という単純な話ではなく、候補者個人への支持が反映されている可能性も考えられます。

ただし、支持政党の設問では国民民主(26.8%)が最多であることを考えると、小選挙区での自民票は「消極的な選択」として自民候補に流れた部分も含んでいるとみられています。この「支持政党と投票先の乖離」こそが、連合が直面する構造的な課題と言えるでしょう。

当選40人という厳しい現実、中道結成の遅れが響いたのか

連合は今回の衆院選で201人もの候補者を推薦しましたが、当選者はわずか40人にとどまりました。2024年の衆院選では149人が当選していたことを踏まえると、推薦候補数を大幅に増やしながらも結果は大きく後退した計算になります。この落差は、単純な選挙戦略の失敗だけでなく、連合が組織として置かれた政治環境の変化を反映しています。

芳野友子会長は21日の記者会見で、中道改革連合の結成が衆院選直前であったことに言及し、「短期間で中道の政策を組合員に浸透させることが難しかった」と述べました。政党が新たに結成された場合、有権者が政策や候補者を把握するためには一定の時間と情報発信が必要です。その点で、準備期間が十分でなかった中道は、組合員への周知活動が追いつかなかったと考えられます。

また、推薦候補201人のなかには国民民主と中道の双方が含まれていたとみられますが、2つの組織間での票の分散や候補者調整の難しさも結果に影響した可能性があります。連合の組合員数は近年、産業構造の変化や非正規雇用の拡大などを背景に加盟組合の規模が変動しており、組織票としての「動員力」が以前より弱まっているとの指摘も専門家の間ではあります。

当選40人という数字は、連合が「推薦を出すこと」と「票を組織的に動かすこと」の間にある大きな乖離を改めて示したと言えます。今後の組合員向けの政治教育や情報共有のあり方が、連合内部で議論の焦点となるでしょう。

「自民支持層が増えている」芳野会長の危機感は正当か

芳野友子会長は記者会見で、「自民支持層が少しずつ増えているという実態がある」と語り、危機感を示しました。この発言は単なる選挙結果への感想ではなく、連合が長期的なトレンドとして組合員の政党支持の変化を把握しつつあることを示唆しています。

労働組合と特定政党の関係は、かつての「鉄の結束」から徐々に弱まってきた経緯があります。1980年代から1990年代にかけて、旧総評(日本労働組合総評議会)が社会党を、旧同盟(全日本労働総同盟)が民社党をそれぞれ支援するという構図がありました。しかし1989年に総評・同盟などが統合して現在の連合が発足して以降、支援政党は時代とともに変化し、組合員の政党支持も多様化が進んできました。

今回のアンケートで注目されるのは、支持政党として立憲民主党が11.3%にとどまっている点です。

連合はかつて立憲との関係も重視していましたが、近年は国民民主との連携を優先する姿勢を強めています。こうした方針転換が組合員に十分伝わっていない可能性もあり、組合員が「連合の推薦する政党」を必ずしも把握していないという情報伝達の課題も垣間見えます。

芳野会長が「国民民主や中道の政策を傘下労組に伝える」と述べた背景には、単に次の選挙への対策というだけでなく、組合員が自ら連合の推薦政党を選択できるよう、政策の「中身」を丁寧に届けることへの意識転換があるとみられます。組織票の動員から政策共感への転換が、連合の課題として浮かび上がっています。

労働組合と政党の関係、これからどう変わるのか

今回のアンケート結果は、日本における「組織票」の在り方を改めて問い直すきっかけになっています。かつては労働組合が特定政党の安定した集票基盤として機能していましたが、現在の組合員は自らの判断で投票先を決める傾向が強まっており、「組合に言われたから投票する」という行動パターンは崩れつつあります。

この変化は民主主義の観点からはむしろ健全な側面もありますが、一方で連合にとっては、政治への影響力を行使するための手段が従来ほど有効でなくなることを意味しています。連合が「政策を伝える」アプローチを強調したのも、こうした現実を踏まえたものと言えます。

日本労働組合総連合会(連合)の2024年の組織人員は約700万人とされており(連合公式発表)、決して小さな組織ではありません。しかし実際の選挙では組合員の投票行動が分散しており、「700万票のまとまった塊」として機能しにくくなっています。

これは政党側にとっても、連合票を「固定票」として見込みにくくなっていることを意味しています。

労働組合と政党の関係は、これからの日本政治の構造変化を理解する上でも重要な視点です。非正規雇用労働者の組合加入率が依然低いなか、連合が代表できる「労働者」の範囲そのものも問われており、組合の存在意義と政治との関わり方をめぐる議論は、今後も続いていくと考えられます。

背景・経緯

連合は1989年に旧総評・旧同盟など複数のナショナルセンター(全国中央労働組合組織)が統合して発足した、日本最大の労働組合の中央組織です。発足当初から特定政党との連携を基本方針とし、旧社会党・旧民主党・民進党・立憲民主党・国民民主党と時代ごとに支援政党を変えながら、選挙での組織的支援を続けてきました。

2009年には民主党政権誕生の一翼を担い、連合の組織力が政権交代に大きく貢献したとして注目されました。しかしその後の民主党政権の失速と分裂により、旧民主系の政党は分散し、連合の支援対象も複数政党に分かれる状況が続きました。

直近の類似事例として、2017年衆院選(希望の党騒動)があります。当時も民進党が分裂・合流を繰り返す混乱のなかで連合の推薦候補が十分な選挙準備ができず、当選者数が大幅に減少しました。

今回の衆院選も、中道改革連合の結成が直前であったという点で、準備不足という構造上の共通点があります。

2024年衆院選で推薦候補149人が当選した一方、今回の2025年衆院選では推薦数を大幅に増やしながら当選は40人にとどまりました。組合員の支持政党が多様化し、投票行動が組織の方針と乖離するという傾向が加速しているのが「今、このタイミング」で問題となっている理由です。

読者への影響

労働組合と政党の関係は、一見すると組合員だけの問題に見えますが、実は幅広い市民に影響するテーマです。連合が支援する政党の政策は、最低賃金の引き上げや非正規雇用の処遇改善など、働くすべての人に関わる労働政策に直結しています。組合票が分散することで連合の政治的影響力が低下すれば、労働者寄りの政策が国会で通りにくくなる可能性もあります。また、組織票の弱体化は日本の選挙構造そのものを変える動きとも連動しており、どの政党が「労働者の代弁者」を担うのかという問いは、今後の政治地図を読む上でも欠かせない視点です。

今後の論点

今後の焦点は、連合が次の国政選挙に向けてどのような態勢を整えるかにあります。芳野会長が示した「政策の浸透」路線が実効性を持つためには、傘下の各単産(産業別組合)が組合員一人ひとりに対して丁寧な情報発信を行う体制が必要であり、それには相当の時間と労力がかかります。

一方で、国民民主党は近年、賃上げや手取り増政策を前面に掲げて支持を広げており、組合員以外の無党派層にも訴求しています。こうした動きが続けば、連合の組織的支援がなくとも国民民主が一定の支持を維持できるようになる可能性があり、そうなると連合にとっての政党への「交渉力」が変化することも考えられます。

また、中道改革連合が次の選挙まで一定の準備期間を確保できれば、今回より政策浸透が進み、組合員への訴求力が高まる余地もあるでしょう。

しかし政党の合従連衡(がっしょうれんこう)が日本政治では頻繁に起きており、次の選挙まで現在の政党構造が維持されるかどうか自体が不透明です。

労働組合の組織率が長期的に低下傾向にある日本では、連合の影響力そのものを問い直す議論も避けられない段階に来ているとも言えます。

報道各社の論調

朝日新聞は今回の結果を「危機感」という芳野会長の言葉を前面に出して報じており、連合の組織的な課題を浮き彫りにする論調をとっています。一方、読売新聞は自民党への票流入という数字の側面を重視し、野党側の組織力低下という文脈で伝える傾向があります。日経新聞は労使関係と政治の構造変化という経済的視点から分析することが多く、組合票の「経済合理性」に基づく多様化という角度での論評が見られます。

編集部の見解

編集部としては、今回の結果で特に注目すべきは「投票行動と支持政党の乖離」という点です。組合員の多くは国民民主を支持しながら、小選挙区では自民に投票しています。これは組織の方針より候補者個人や地域事情が投票に影響していることを示しており、日本の選挙制度と組織票の関係を考える上で重要な示唆を含んでいます。単純に「連合が力を失った」と読むのではなく、有権者の判断がより自律的になっている変化として捉えることも重要です。

本稿の論点整理

連合の組合員アンケートは、労働組合の組織的な選挙支援と個々の組合員の投票行動の間に無視できない乖離が生じていることを数字で示しました。小選挙区での自民最多票、当選40人という結果、そして芳野会長の危機感発言は、連合が「動員型」から「政策共感型」への転換を迫られていることを示しています。日本の労働政策や選挙の行方を読む上で、連合という組織がどう変わるかは引き続き注視すべきテーマです。

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参照元:朝日新聞

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