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高市首相がG7前に英伊訪問へ:なぜ今この2カ国なのか

高市首相 G7前 英国・イタリア訪問
seiji.tokyo 編集部
読了 約12分(約4,746字)

高市早苗首相が、6月15〜17日にフランスで開かれるG7サミットに先立ち、英国とイタリアを訪問する方向で調整が進んでいます。この記事では、訪問の狙いや2カ国との関係の現状、スターマー英首相の政権不安定という「流動的な要素」、そしてG7前外交がなぜ重要なのかを、背景知識も含めてわかりやすく解説します。

🕐 約8分で読めます
📰 引用元:朝日新聞

📌 この記事の要点

  • 高市首相はG7サミット(6月15〜17日・フランス)前に英国・イタリアを訪問する方向で調整中です
  • 英国のスターマー首相、イタリアのメローニ首相はいずれも今年1月に来日済みで、首脳間の関係構築が続いています
  • 英国では地方選大敗でスターマー首相の退陣圧力が高まっており、訪問日程には流動的な要素も残っています

G7前の二国間訪問、そもそも何が目的なのか

G7サミットとは、日本・米国・英国・フランス・ドイツ・イタリア・カナダの7カ国首脳が集まり、世界経済や安全保障などの重要課題を議論する国際会議です。今回は6月15〜17日にフランス東部の都市エビアンで開催されます。

首脳が多数集まるサミット本番の場では、全体会議のスケジュールが詰まっており、二国間で腰を据えて話し合う時間は限られます。そのため、首脳外交では「サミットの前後に個別訪問をセットする」という手法がよく使われます。今回の英国・イタリア訪問もこの文脈で理解できます。

今回の訪問で確認が見込まれるのは、安全保障と経済の両分野における協力です。英国とは2023年に発効した「日英円滑化協定(RAA)」——両国の自衛隊と軍が相互に相手国で活動しやすくする取り決め——の運用深化が議題に上るとみられます。

イタリアとは、次世代戦闘機の共同開発プロジェクト「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」が両国関係の大きな柱になっており、開発スケジュールや費用分担といった実務的な課題の確認が予想されます。

また、スターマー首相、メローニ首相のいずれも今年1月に来日し、高市氏と直接会談しています。その意味では、今回の訪問は新たな関係を「開く」のではなく、すでに構築しつつある関係を「深める」ための機会と位置づけられます。外交においてはトップ間の信頼関係が政策協力の土台になるとされており、短期間に複数回の首脳会談を重ねること自体に外交的な意味があります。

イタリアとの関係——戦闘機共同開発という特別な絆

日本とイタリアが首脳外交を活発化させている背景には、GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)の存在が大きくあります。これは日本・英国・イタリアの3カ国が共同で次世代戦闘機を開発するプロジェクトで、2022年12月に3カ国が共同開発を正式発表しました。2035年の配備を目標としており、総事業費は数兆円規模に上るとされています。

防衛装備の共同開発は、単なる兵器の製造協力にとどまらず、技術情報の共有や産業間の連携、さらには政治的な信頼関係の象徴でもあります。そのため、GCAPに参加するイタリアとの関係強化は、日本の安全保障政策において中長期的に重要な意味を持ちます。

メローニ首相率いるイタリアは、右派連立政権として欧州域内では独自の存在感を示しており、G7の中でも日本との価値観や安全保障上の懸念を共有しやすいパートナーとして評価されています。

ロシアによるウクライナ侵攻への対応、インド太平洋地域の安定といった議題でも、日伊の立場は近い部分が多いとされています。

今回の首脳会談では、GCAPの進捗確認に加え、ウクライナ支援の継続姿勢や経済安全保障(重要物資の供給網を安定させる取り組み)についても意見交換が見込まれます。防衛と経済の両面で日伊関係が深まっている点は、5年前には想定しにくかった変化と言えます。

スターマー首相の政権不安——英国訪問はどうなるのか

英国との首脳会談をめぐっては、不確定要素があります。労働党を率いるキア・スターマー首相が、2025年5月の地方選挙で大敗を喫し、党内外から退陣圧力が高まっているためです。

スターマー首相は2024年7月の総選挙で労働党を14年ぶりの政権復帰に導きましたが、就任後は経済低迷や移民問題への対応をめぐって支持率が低下。今回の地方選での敗北がそれに追い打ちをかけた形です。英国政治において首相が地方選大敗後に辞任した直近の例としては、2019年の欧州議会選挙後にテリーザ・メイ首相が退任を表明したケースがあります。ただし当時はブレグジット(英国のEU離脱)をめぐる複雑な政治状況が重なっており、単純な比較は難しい面もあります。

現時点でスターマー首相が即座に辞任するかどうかは不透明ですが、政権基盤が揺らいでいる指導者との会談は「空振りに終わるリスク」を含みます。

仮に会談直前に指導者が交代した場合、新たな相手との関係構築はほぼゼロからのやり直しになります。外務省や首相官邸がこの訪問を「流動的な部分もある」と位置づけているのは、こうした事情を踏まえたものと考えられます。

一方で、英国との安全保障協力——特に日英円滑化協定の運用や情報共有の枠組み——は、政権が変わっても引き継がれる制度的な基盤の上に成り立っています。だからこそ、相手の政権が不安定であっても訪問の方向性を維持しているとも読めます。

高市外交の方向性——インド太平洋と欧州の連携強化

今回の英伊訪問は、高市首相就任後の外交姿勢の一端を示しています。高市氏は経済安全保障や防衛力強化を重視する立場として知られており、首相就任後も自由主義諸国との連携深化を外交の軸に据えています。

英国とイタリアはいずれも欧州の主要民主主義国であり、NATOの加盟国でもあります。近年、欧州とインド太平洋地域(日本・オーストラリア・韓国など)の安全保障上の連携は急速に深まっています。NATOが2022年以降のサミットに日本を招待していること、英国・フランス・ドイツなどが相次いでインド太平洋地域に海軍艦艇を派遣していることなどが、その象徴です。

日本政府の立場から見れば、欧州主要国との個別の首脳関係を強化しておくことは、多国間の枠組み(G7、NATO+4など)での議論をより実効的に進めるための布石になります。

首脳同士の信頼関係がある場合とない場合とでは、交渉の速度や合意の深さが変わってくるためです。

今後のG7サミットでは、ウクライナ支援の継続、中国への経済的な対応、人工知能の国際ルール形成などが主要議題になるとみられています。高市首相がこれらの議題でリーダーシップを発揮するうえで、事前の二国間訪問は外交的な準備作業としての役割を担っています。

背景・経緯

日本とG7各国との首脳外交は、近年その頻度と実質性が高まっています。転換点のひとつは2022年のロシアによるウクライナ侵攻で、これを機にG7は結束を強め、首脳間の直接対話が以前より重視されるようになりました。

英国との関係では、2023年1月に日英安全保障協力の新指針が発表され、同年7月には自衛隊と英軍が相互に活動しやすくなる「日英円滑化協定(RAA)」が発効しました。これは2007年に日豪間で締結されたRAAに倣った枠組みで、日本が欧州の国と結ぶ初めての協定として注目されました。

イタリアとの関係では、2022年12月のGCAP共同発表が大きな節目です。防衛装備の共同開発は日本の武器輸出規制の見直しを伴う政策転換でもあり、政治的な決断として画期的と評価されています。

高市早苗首相は2025年10月21日に就任後(その後2026年2月18日に第105代首相に指名)、同年3月に米国のトランプ大統領と首脳会談を実施。4月には東南アジア歴訪を行うなど、精力的な首脳外交を展開しています。今年1月にスターマー英首相とメローニ伊首相が相次いで来日し、高市氏と会談したことで、今回の返礼訪問という側面もあります。なぜ今このタイミングかと言えば、6月のG7サミットという「期限」が自然な訪問の契機を作っているためです。

読者への影響

首脳外交は「遠い世界の話」に見えますが、その結果は私たちの生活に間接的に影響します。例えばGCAPの共同開発が順調に進めば、日本の防衛産業の技術水準が高まり、関連産業の雇用や技術革新につながる可能性があります。また英国・イタリアとの安全保障協力の深化は、日本が国際的な安全保障上の役割を拡大していく流れの一部であり、防衛費の増加や外交政策の転換として税負担にも関わってきます。どの国とどのような協力関係を結ぶかは、中長期的な日本の国際的な立ち位置を形作るものでもあります。

今後の論点

今後の焦点は、まず英国のスターマー首相が6月中旬まで政権を維持できるかどうかです。もし会談が実現すれば、日英間の安全保障・経済協力の具体的なロードマップが示される可能性があります。一方で仮に政権交代が起きれば、新首相との関係構築を改めて進める必要が生じ、日英協力の一部が停滞するリスクも否定できません。

イタリアとの会談については政権の安定度が比較的高く、GCAPの進捗確認や次のステップに向けた合意が得られる可能性があります。ただ、欧州全体が財政難と景気の不透明感に直面しており、防衛費の共同負担をめぐる議論は今後一層複雑になることも予想されます。

G7サミット本番では、ウクライナへの継続支援の方針確認と、中国との経済関係をめぐるG7内の温度差がどこまで調整されるかが注目点です。欧州各国と米国の間でも対中政策にはずれがあり、日本がその橋渡しとなれるかどうかも高市外交の試金石になるでしょう。

今回の二国間訪問がG7全体の議論にどう反映されるか、サミット後の共同声明の内容も含めて注目されます。

報道各社の論調

朝日新聞は今回の訪問調整を政府関係者の情報として報じつつ、スターマー首相の「退陣圧力」という不安定要素を明示的に盛り込んでいます。読売新聞は安全保障協力の前進という側面を重視した報じ方をすることが多く、訪問実現の意義を前向きに伝える傾向があります。日経新聞は経済・産業面での協力、特にGCAPに絡む防衛産業への影響という切り口を重視する報道スタイルが見られます。各社の強調点の違いは、読者が複数紙を参照することで全体像を把握しやすくなります。

編集部の見解

編集部としては、今回の訪問調整で注目すべきは「スターマー政権の不安定性」という不確定要素をどう読むかだと考えます。外交日程は相手国の政治状況に左右される点で、純粋に二国間の意思だけでは動かせません。どの時点で訪問を確定させるか、あるいは代替案をどう準備するかという政府の判断の透明性が、今後の報道で問われる点になるでしょう。

本稿の論点整理

今回のニュースは、高市首相がG7サミット前に英国・イタリアを訪問し、安全保障と経済分野の協力を確認しようとしているものです。英国では戦闘機共同開発や安保協定の深化、イタリアではGCAPの進捗が主な焦点となります。一方でスターマー英首相の政権基盤の揺らぎという不確定要素が訪問の実現可能性に影を落としており、外交日程の「流動性」という現実を示す事例でもあります。G7サミットに向けた事前外交の意義と限界の両面を押さえておくことが重要です。

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参照元:朝日新聞

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